













山椒ソース(トリイソース)
山椒好きがハマる 香り立つ一本
職人醤油 No.3097
100年つづく、静岡・掛川のソース屋さん
「このソースじゃなきゃダメなんだ」——そんな声が聞こえてきそうな、地元で愛され続けるソースがあります。静岡県掛川市にあるトリイソースは、創業1924年、老舗のソースメーカーです。
料理の主役は野菜や肉・魚といった食材であり、調味料はその主役の味を引き立てる脇役と考え、ソース単体が「おいしい」ではなく、ソースといっしょになった料理の味が「おいしい」と言われる塩梅になるソースを目指しているそうです。
ソースの原材料は意外と知られていないと思います。社長の鳥居大資さんは「醤油は塩味とうま味を添えるもので、ソースは酸味とうま味を添えるものですよね」と説明されますが、酸味の元になるのが酢で、うま味の元になるのが野菜。それらに香辛料を加えたものがソースになります。
そんなトリイソースのソースは100%国産の野菜や果物をじっくり煮込んでつくる、深いコクとやさしい甘みが特徴。食品添加物を使わず素材本来の味わいを大切にした製法を守り続けています。
トリイソースのこだわり
1.まるごと生野菜
初めてトリイソースを使ったとき、「あれ、なんかやさしい…?」と思ったんです。それもそのはず。にんじんや玉ねぎ、トマトにセロリまで、国産の生野菜を皮ごとまるごと煮込んでいるそう。しかも粉末や濃縮じゃなくて、ほんとの野菜。だからでしょうか、口あたりがまろやかで、あと味がスッと引く。
ソースというと「濃い味つけ」のイメージがありますが、トリイソースは料理のじゃまをせず、ちゃんと引き立ててくれるのです。「こんなソース、初めてかも」と思わせてくれるやさしさ。これが、トリイのすごさなんだと思います。
2.自社製 醸造酢
ソースの味をキュッと引きしめる名脇役。それが酢です。
トリイソースではなんと、この酢まで自社でつくっているそうです。原料には国産米と酒かすを使い、昔ながらの静置発酵という手法でゆっくりじっくり。発酵・熟成に時間はかかりますが、その分酸味にとげがなく、まるみができるそうです。
ソースに入ってるお酢って、ふだんはあまり意識しない方も多いと思いますが、私はこのソースの酸味がすごく好きなんです。とがってないのに、ピシッと味をまとめてくれる感じ、まさに名脇役です。
3.原形香辛料
ソースといえば香辛料も欠かせません。香辛料はパウダー状に粉砕してソースに入れるのが一般的だそうです。香辛料の香りが効率よくソースに溶け込むためです。
ところがトリイソースでは、香辛料を原形(または粗挽き)の状態で濾し袋に入れ、ソースの中に漬け込んでいるのです。これは、香りだけをソースに溶け込ませ、苦みで味の邪魔をしないようにするためです。さらにすごいのは漬け込む温度帯を2段階に分けていること。熱に強い香辛料と弱い香辛料があり、欲しい香りだけをしっかり溶け込ませるためだそうです。
香辛料を袋にいれて漬け込むイメージなのですが、「急須でいれたお茶と粉茶をイメージしていただくと分かりやすいと思います。急須のお茶はインパクトは少ないけど、すーっと入ってくる。粉茶は味がストレートだけど苦味も残る」と鳥居さんが説明してくれました。
すごいこだわり!その手間が、たしかに味に出ている気がします。香辛料の香りはしっかりとあるけど、全然くどくないし、雑味がなく奥行きがあるのにやさしいんです。
4.木桶熟成
トリイソースは、煮込んだウスターソースを木桶で熟成しています。ソースの工場に「木桶がある」って、ちょっと衝撃じゃないですか?
木桶の中で、味の均一化と代々のうま味が凝縮される熟成の時を過ごします。熟成させることで味が丸くなるのはよい反面、塩角が取れすぎてしまうと味がぼやけてしまうそうです。トリイソースでは長年培った経験の中で、1か月ほどの熟成がちょうどよい塩梅にたどりついたとのこと。
職人醤油のお客様は「木桶」に反応してくださる方がとっても多いです。木桶仕込みのソース、かなり貴重な存在です!!
木桶で熟成させたソースがベース
山椒ソースは中農ソースがベースになっています。そして、中農ソースはウスターソースがベースになっていて、そのウスターソースは木桶で熟成させています。
仕込みの終わったウスターソースは一度この桶の中に入れられます。そして、中農ソースの原材料になる分が再び引き出されます。継ぎ足しソースのような感覚で、新たに注がれてから出ていくまでに平均すると2か月くらいをこの中で過ごしているそうです。
山椒の香りを最大限に生かす独自製法
今までは、山椒の香りが水分に溶けてしまい、山椒の特徴である香りを十分に活かすことができませんでした。そこで、山椒の実を製造直前(製造日の前日)に粉砕し、油と混合することで、山椒の香りを油で封じ込める製法に変えたそうです。
使用する油は山椒の香りを邪魔しない比較的香りがおとなしい米油を採用。この米油に漬け込んだ山椒をソース製造工程の最後の最後で釜に入れて、最低限の加熱で瓶に充填しています。
山椒マニアにはたまらない
「山椒大好きなんです!」そんなお客様が何度もお店まで足を運んでくださったり、「なかなか来られないから」とまとめ買いをされていくこともあります。一度この山椒ソースの虜になると、もう他では満足できなくなってしまうんですよね。
この山椒ソースの魅力は、なんといっても地元春野町産の青山椒を使った上品な香り。山椒の香りを最大限に閉じ込めているから、開栓した瞬間から香りが違います。柑橘系の爽やかさが、中濃ソースの甘さと絶妙にマッチして、一度食べたら忘れられない味わいに。とんかつやささみフライにかければ、まるでレモンを絞ったかのようにさっぱりといただくことができます。
でも真の山椒マニアの方は「とにかく何にでもかけちゃいます」と笑顔でおっしゃるんです。その気持ち、よくわかります。
こんな使い方はいかがですか?
山椒ソースは和風のおかずに不思議とよく合う、そんなソースです。薬味感覚で少しずつ、味の変化をお楽しみください。
・焼き肉のタレ代わりに——脂っこさを軽やかに
・焼き魚にちょいがけ——爽やかな香りがアクセントに
・焼きナスや冷しゃぶに——夏の副菜がグンと引き締まる
・唐揚げや揚げだし豆腐に——いつもと違う味の楽しみ方
\こんな方におすすめ/
・山椒が好きで、料理に香りのアクセントをつけたい方
・甘口のソースに少し飽きてきた方
・ふだんの定番おかずを、ちょっと大人っぽく仕上げたい方
文:またのみほ(職人醤油)
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